本事例は、もともと駐車場として利用されていた土地を、新築賃貸住宅として活用した実例です。
駐車場のまま維持する、売却する、賃貸住宅を建築するという選択肢を、将来得られる収入だけでなく、必要となる費用、管理負担、修繕、空室、将来の売却可能性まで含めて比較しました。
- 駅徒歩約9分
- 1LDK × 4戸
- 借地活用
- 駐車場の運用設計
- 売却・維持・建築を、収入だけでなく、費用・管理負担・将来の売却可能性まで含めて比べる
- 建築会社は複数社の提案を、法令・プラン・性能・コストの面から比べて選ぶ
- 入居者募集と管理の準備を建築と並行して進め、竣工時の満室稼働を目指す
判断には、完成後まで見通した比較が必要です
建築を選択するためには、想定賃料や建築費だけでなく、資金調達、入居者需要、管理・募集体制、所有後の負担、将来の売却可能性まで確認する必要があります。
- 想定価格
- 売却時期
- 販売方法
- 売却費用
- 建築可能な規模
- 建築費
- 想定賃料
- 事業収支
- 完成後の運営
- 維持費
- 将来の修繕
- 管理負担
- 収益性
- 将来の売却可能性
売却と建築を比較するときに確認する4項目
-
1
土地と地域の需要
その土地でどのような住宅や使い方が求められているか、賃貸需要、周辺環境、将来の地域変化を確認します。
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2
売却価格と事業収支
今売却した場合に得られる金額と、建築・運営した場合の収入、費用、融資返済、将来の売却価値を比較します。
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3
建築費と所有後の負担
建築費だけでなく、修繕、管理、空室、金利変動など、完成後に発生する費用と負担も含めて確認します。
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4
運営体制と将来の出口
誰が管理・募集を担うのか、長期的に運営を続けられるのか、将来売却しやすい物件になるのかを確認します。
事業収支、資金調達、完成後の運営負担を考慮した結果、本事例では新築賃貸住宅としての活用が合理的と判断しました。
最初の約3か月は、建築会社の選定に充てます
本事例では、初期段階で6社に打診し、そのうち3社から初期提案を受け、最終的に1社へ絞り込みました。提案を比べる際には、次の3つを確認しています。
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1
法令・敷地条件の確認とボリュームチェック
土地の形状、用途地域、斜線制限、道路との関係、セットバックの要否など、各種の法令基準を確認したうえで仮測量を行い、建てられる規模を確かめます。
-
2
プランの検討
建蔽率・容積率を有効に使える間取りと空間の取り方を、建築会社とともに検討します。高さ制限や斜線制限を確認しながら、小屋裏の居室化や1階の床下収納など、空間を無駄なく使うことを重視しました。
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3
建築仕様・性能・コストの比較
金額帯や契約・支払い条件を加味しながら、建物の仕様を一つずつ確認します。
- 断熱性能
- 一般的な断熱材か、吹き付け断熱か。断熱等性能等級をどこまで取得できるか
- 構造・耐久性
- 耐震等級や劣化対策等級(等級3を取得できるか など)
- 外壁
- どの程度の耐久性を持つサイディング材を使うか
- 住宅設備
- キッチン、浴室、トイレなど水回り設備とそのコスト。標準仕様か追加オプションかは会社によって見積もりの構成が大きく異なるため、全体を比べて判断します
建築会社は価格だけでなく、施工力、仕様、保証、完成後の対応まで含めて比較します。
断熱、気密、換気、外壁、塗料、各部材については、初期費用だけで判断せず、日々の運営コスト、入退去時の負担、将来の大規模修繕まで含めたライフサイクルコストを考える必要があります。
将来いちばん費用がかかる漏水に備えて、配管を確認します
建物で将来もっとも費用がかかりやすいのは、漏水です。配管がどこを通っているのか、どのような形状や仕組みになっているのかを確認します。
そして何より大事なのは、維持・保全・補修・修理が簡単に行える設計になっているかどうかです。
入居者に選ばれる仕様を、費用対効果で組み立てます
長く安心して暮らしていただける入居者の方に選んでいただくためには、いま入居に有利な条件が何かを理解しておくことが大切です。バス・トイレ別であることは当然として、十分な数の宅配ボックス、防犯カメラ、防音、そして高速インターネットも重要になります。
- バス・トイレ別
- 十分な宅配ボックス
- 防犯カメラ
- 防音
- 高速インターネット
高速インターネットと防犯カメラは、あわせて設計します
最近は、高速インターネットが入居の条件になるケースもあります。本事例でも、入居者の方から高速インターネットのご要望がありました。
インターネット回線を活用すると、防犯カメラを毎月の固定費がかかるSIMカード型ではなく、建物のインターネット回線から接続できるため、防犯カメラの維持費がかからなくなります。
そのため、防犯カメラは最初から回線とあわせて設計し、Viewlaなどで携帯からいつでも確認できるか、システムの内容まで確認しておくことが大事です。
建築会社に直接依頼すると、細かな調整がしやすくなります
建売で販売するビルダーに依頼した場合、こうした設備や仕様をオプションで加えることは難しくなります。一方、工務店や建築会社に直接依頼する場合は、追加工事や仕様変更を加えたときの費用対効果が大きくなります。本事例でも、次のような調整を行いました。
- 1階と2階の間にALCパネルを入れる(防音効果・剛性の強化・断熱効果)
- 防音のため、界壁側の一部にはコンセントをなるべく設けない
- 断熱は、小屋裏も含めて吹き付け断熱(アクアフォーム)を施工する
- 天井を折り上げ天井にし、調光付きの間接照明を組み込む
- キッチンや浴室のサイズを少し大きくする
こうした追加工事や仕様変更ができる点が、デベロッパーが企画した一般的な新築アパートを完成後に購入する場合との違いです。
同じ規格で数多く建てる建売のビルダーは、決してコストが高いわけではありません。工務店に直接依頼すれば必ず安くなる、というものでもありません。
直接依頼する利点は、費用対効果を一つずつ考えながら調整しやすいことです。それが周辺物件との差別化につながり、外壁や塗装材に高耐久のものを選ぶことで、長い目で見て結果的にコストを抑えられる面もあります。
着工から竣工まで
建物がどのように形になっていくのか、実際の工事の写真で順に追っていきます。
-
1
基礎工事型枠を組み、基礎をつくり始める -
2
基礎の配筋鉄筋を組み、コンクリートを打つ前の状態 -
3
上棟柱や梁を組み上げ、建物の形が見えてくる -
4
断熱工事壁・屋根裏に断熱材を吹き付け、内装ボードを搬入 -
5
内装下地壁や天井の下地をつくり、設備の位置を決めていく -
6
建物の完成外構工事に入る前の状態 -
7
外構・竣工駐車場・植栽・門柱まで仕上げて完成
地盤調査を行い、地鎮祭を経て、基礎工事、上棟へと進みます。
電気配線や設備の打ち合わせを定期的に重ねながら、壁紙・クロスを選び、複数メーカーのショールームで仕様を確定します。費用対効果を確かめながら、グレード、色、タイプ、ユニットバスのメーカー・サイズ・パネル、トイレやキッチンの仕様まで細かく詰めていきます。
水回り、洗面、浴室、トイレ、照明、天井仕様に加え、小屋裏や床下収納など、法規と建築条件を踏まえた空間の有効活用も、使いやすさ、賃貸競争力、建築コスト、将来の物件価値を考えるうえで重要です。
工程の後半に外構工事に入ります。外構はその物件の「顔」になる大切な部分です。費用対効果を考えながら、かけるべきところにはしっかり費用をかけます。後からの変更を避け、事前に計画を固めて一度で施工を終えることが工事費の削減にもつながるため、打ち合わせを入念に行います。
防犯、宅配、照明、アプローチに加え、駐車場の運用方法(居住者用・月極・カーシェア等)も、入居者の利便性と収益性、周辺物件との差別化を考えるうえで重要になります。
完成時に引き渡し検査を行い、竣工となります。
建築と並行して、募集と管理の準備を進めます
- 建築確認が下りた段階から入居者募集を始める
- 管理会社を事前に選定する
- 家賃を設定し、ポータルサイトへの広告掲載を進めて、竣工時の満室稼働を目指す
- 駐車場の計画を立てる
管理会社を選ぶときに比べるポイント
- 管理費用が賃料の何パーセントか
- そのエリアに店舗を構えて活動しているか、エリアでの実績があるか
- 客付け(入居者募集)の力が高く、幅広く募集してもらえるか
- 定期的に建物を巡回する専任の担当者がつき、何かあったときにその担当者の携帯へすぐ連絡が取れるか
- 管理委託契約の条件が、国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」から大きく外れていないか
- 広告料(AD)や更新時の費用が一般的な水準か
これらを総合的に比べて判断します。管理や募集の見通しが立たなければ、建築そのものを再検討する必要があります。
駐車場の計画
本事例では、駐車場の1区画をカーシェアリングに設定しています。駐車場の区画を埋めるためだけでなく、入居者の利便性と満足度を高めるための工夫です。
新築賃貸住宅では、完成してから運営方法を考えるのではなく、入居者、賃料、建物仕様、管理・募集体制を完成前から整える必要があります。それぞれを個別に決めるのではなく、事業収支や将来の運営と整合させながら、全体を一つの計画として組み立てることが重要です。
本稿は一つの事例をもとに検討の考え方を整理したもので、特定の収益、入居率、資産価値等を保証するものではありません。土地・建物の条件や資金計画によって、適した選択肢は異なります。